記念講演

第102回 全国図書館大会 記念講演

「地域創造と図書館の未来」

―わたしたちが継ぐもの―

 地方で暮らしていると、20年もしないうちにさまざまな物事が継がれることなく終わってしまうように感じます。地域創造は、継承をどうするのかを考えたその先にあるのではないでしょうか。
 私自身、無農薬で田んぼを維持しながら稲作塾をし、放置林を切って薪にしながら山の整備を学ぶ場をつくっています。また、各地のまちづくりに関わらせていただき、地域の記憶や夢を共有する仕組みを試みています。展示、ツアーも行います。常識や机上の知識だけでなく、ひとに会い、体験、習得し、語り合ったことも加え、『大事なもの』を自ら選んでいくにはどうすればいいのか、日々考えています。
 山形・鶴岡市に知憩軒という素敵な農家民宿・レストランがあります。長南光さん親子によって丁寧につくられる料理は自家畑や地区産の素材が中心。心に沁みるほどに美味しい。何度目かに訪れた時、その美しい空間をつくった理由を伺い、驚きました。「農家は給料はもちろん、保険、年金もないに等しい。病気になれば生きられない。何とかしなければという一心で、みんなが軒下で憩い、学び、生き延びることができる場をつくろうと思った。」
 本来、図書館(員)は、本や資料を媒介にし、そこに込められた『大事なもの』をひとの心から心へと継いでいくために在る。だとすれば、図書館は、その土地で生き、守る人、継いでいこうとする人が、たとえ本を読まないような人であっても、足を運んでもらい、記憶や智恵、希望をさまざまな形で表現し、伝えようとすることを全力で支援していく。そんな話を、事例を交えながらしたいと思います。

 

 

■ 講師
森田 秀之 氏(株式会社マナビノタネ 代表取締役)
  1966年東京都生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。1991年株式会社三菱総合研究所入社。2007年同社退職、マナビノタネ設立。
 地域資源(場所、人、モノ、職、技、伝統、文化、食、体験など)に尊敬の念を持ち、それらを守り、ひとりひとりが文化的で楽しく個性豊かに暮らしていくためのさまざまな場づくりを行う。また、人や技、場所、モノなどに憧れる気持ちから自然に始まる新しい学びのスタイルも探る。
 開館支援を行った図書館を含む公共施設には、せんだいメディアテーク、川口メディアセブン、武蔵野プレイス、瀬戸内市民図書館もみわ広場などがある。